Column

食材、スパイス、文化などなど、タイの魅力をいろいろな角度から切り取ってご紹介。タイの空気が香るような情報をイラストとともにお伝えします。

タイダンスCafe’ イラスト

おおのきよみ イラストレーター

1999年タイを拠点に7ヶ月間アジア各国を巡るスケッチ旅行に出掛け、帰国後、主に旅行関連の書籍で活動を開始する。現在も絵を描きながら旅を続け作品を発表している。著書に「おもちかえりアジア」(情報センター出版局)等。

「果物の王様」と言われるドリアンをはじめ、
「果物の女王様」と言われるマンゴスチン、日本でも人気のマンゴーなど、
スーパーや市場には色とりどりの南国フルーツが所せましと並び、
タイはまさにフルーツ天国。
マンゴーだけでも60種類以上もの品種が栽培されているほどです。
 
日本では、マンゴーは黄色く熟してから食べる甘いフルーツというイメージがありますが、
タイでは、まだ熟していない青い状態のものも日常的に食べられています。
黄色く熟したマンゴーは、そのままはもちろん、「カオニャオマムアン」と呼ばれる、
ココナッツミルクとパームシュガーで味付けされたもち米を添えたスイーツにするのが、
タイの女の子たちの粋な食べ方。
 
一方、青く未熟なマンゴーのうち酸味の強いものは、シャキシャキした食感を活かし、
サラダとして食べたり、カピソース(海老のペースト)を付けて食べられたりします。
また、青くても甘みのある品種のものは、
塩・砂糖・唐辛子粉を混ぜ合わせた調味料を付けて食べられることが多く、
学校帰りの子どもたちのおやつの定番です。
 
新鮮なフルーツが豊富なタイでは、
フルーツは人々の食生活に欠かせないものとなっています。
マンゴー以外にも、例えばパイナップルは、
レッドカレーやチャーハンの具として加えたりと、
その食べ方は幅広くてとってもユニーク。
そんな、フルーツとの美味しい関係が発見できるのもまた一つ魅力のタイです。

タイカレーといえば、グリーン・レッド・イエローと色鮮やかなことも魅力のひとつ。
この色の違い、それぞれのペーストを作る時に使われる食材に
ヒミツが隠されているのです。
タイカレーの味を決めるペーストは、レモングラスやタイ生姜などのフレッシュなタイハーブとにんにく、赤小玉ねぎ(ホムデン)、様々な唐辛子やドライスパイスなどを使って作られていて、市場で買うことができます。
 
グリーンカレーペーストの特長となるのは、大小2種類の緑の生唐辛子。
小さい唐辛子は辛さと香りを、大きい唐辛子は辛さに加えて
色や甘みを出す役割があります。
さらに、クミンや唐辛子の葉やバジルを使って、
あの緑の色を鮮やかに仕上げているのです。
一方、レッドカレーペーストには、赤色の乾燥した唐辛子が使われます。
グリーンカレーペーストと同じく、大きさの異なる唐辛子と
たっぷりのフレッシュハーブがそれぞれの役割を果たしています。
イエローカレーペーストは、グリーンやレッドとは大きく異なり、
カレー粉、つまりターメリックやコリアンダーシードなどの
ドライスパイスが多く使われるのが特徴で、黄色の素となっています。
 
これらのペーストを炒めて香りを出して具を加え、
ココナッツミルクやナムプラー(タイの魚醤)で味を整えればタイカレーの完成です。
 
この3色のカレーは一般的に、グリーン>レッド>イエローの順で辛いと言われます。
グリーンは爽やかな辛さが刺激的、レッドはヒリヒリした辛さ、
イエローは日本のカレーに近い辛さが特徴です。
辛さの違いもまた、タイカレーが日本で魅了される所以ゆえんでしょう。

タイ料理の中で、日本人にとっては最もポピュラーなトムヤムクン。
世界3大スープの1つとも言われ、辛さと酸味のバランスが魅力的です。
トムヤム=スパイシーなスープ、クン=海老という意味があり、
タイでは海老以外にも魚や鶏肉などの具を変えて楽しみます。
トムヤムそのものは日常的なメニューですが、大きな海老を使ったトムヤムクンは、
高級なお料理としてハレの日に食べられています。
 
タイの中央部にあり3つの大きな河に囲まれているアユタヤは、
恵まれた水運を利用したヨーロッパや東アジアとの貿易によって、
かつて王朝として栄えました。
食文化においてもその地形から、川魚・川海老を使うお料理がたくさん見られます。
アユタヤに起源を持つトムヤムクンはまさにその代表と言えるでしょう。
 
トムヤムクンにはもともと、アユタヤの河で獲れる
大きな手長海老(クンメナームと呼ばれる)が使われていましたが、
今ではいろいろな海老で作られています。
ミソのつまった海老の頭と殻、鶏がらでとった旨みのあるスープに、
タイ料理には欠かせないハーブであるレモングラス(タクライ)、
こぶみかんの葉(バイマックルー)などがふんだんにブレンドされています。
さらに 唐辛子(プリック)の"辛さ"、タイライム(マナオ)の"酸味"の
バランスと魚醤(ナンプラー)の"塩味"で味が決まるトムヤムクンは、
その美味が世界中で認められた逸品なのです 。

東西に広く南に長い形から"ゾウの頭"とも呼ばれるタイの国土は、
気候や風土、文化の違う南部・北部・東北部・中央部の4つに分かれます。
 
マレーシアに近い南部は香ばしいドライスパイスと生唐辛子、
胡椒を大量に使い4つの地域で最も辛い味付けで知られ、
冷涼な北部ではミャンマーの影響が色濃く、
豚肉を使った脂っぽい料理が多いのが特徴です。
また、ラオスを川向こうにのぞむ東北部(イサーン)では、
川魚や肉類を保存食として加工した料理が多く見られます。
そして中央部のルーツは宮廷料理、
フルーツや野菜を美しく彫り上げたカービングが彩りを添えます。
地形と食、人が深いところで結びついているのです。
 
隣り合った、海を越えた国々との交流は
タイ料理に大きな影響を与え続けています。
例えば、ゲーン・カリー(イエローカレー)は、
インド人によって持ち込まれたターメリックやクミンといったスパイスに、
タイのレモングラス、タイしょうがなどのフレッシュハーブと
ココナッツミルクが加わった[タイ+インド]の香りの相乗効果、
今日ではタイ全土で食べられる人気メニュー。
 
他の国々のよいところをしなやかに受け入れ、吸収し、
オリジナリティを加えて自分達のものにする。
この繰り返しでタイ料理は今なお進化を続けているのです。

屋台が食卓代わり、という忙しいバンコクなどの都市部を除き、
地方ではお料理を作る時間はとても大切にされています。
家族、時にはご近所が集まって賑やかに、ていねいにお料理を作ります。
お年寄りから若い人へ、母から子へ、お料理だけでなく
いろいろなことが伝えられるひとときです。
 
タイカレーの味を決めるペーストは、クロック(臼)とサーク(杵)で
フレッシュタイハーブと唐辛子を丹念に叩き潰して作ります。
香りがよくておいしくて、身体のことも考えたタイの知恵の結晶、
芳しいこのペーストで山海の幸をさっと煮て、
仕上げにフレッシュハーブをたっぷりと加えればタイカレーの完成です。
 
知恵とハーブとスパイスがぎゅっと詰まったタイカレー。
タイのキレイと元気の秘訣、なのです。